A

声もあげずに生きている
君のためにとっておいた愛すべき弱さで
「このままくっついちゃったらどうする?」
夕飯の魚に恋をした
君がふたり欲しい
隙を見せない=好きを見せない
泣き出したい気持ち/けれどこれはかなしみではありえない
とがった骨でわたしを刺して
そいつぁ無理な相談だ
まぜられたらとけてしまう気持ち
君が誰かを憎むためのその汚さでいいから僕にください

触れた熱から壊れてく
小さなおんぼろの中の地球
とりあえずは無敵
「まったく明るい夜ですね」
「あなた」/呼ぶ声は誰のもの
知らないふりをしているうちに忘れるの
つめの間をすり抜けて
折れ曲がった入場券

見てくれだけならいくらでも
やさしい卑怯者
鳴らした鐘は響かない
きらきらしたものは信用できないからわたしを選んだのね
殺して、と彼女が言うので僕は精一杯に愛してやりました
坂道をかけあがったらあとは下るだけ
見つけてほしかった本当は
悲しいことを悲しいと思えないことが悲しい
羽化した瞬間折れました

踏み切りの音が止んでも振り向けなかった
分解されて粒子になって元素に還って吹き飛んでしまえばいい
赤が朽ちて出来あがったもの
オイルは切らしたままにして
忘れるぐらいなら憎んでちょうだい
最低のハッピーエンド
借り物の答え

わたしのためには大きすぎた手のひら
揺れて掠れるほどに
ほっといたら死んじゃう
わたしに名づけて
木の上のあなた
たのもしい静寂
爪の割れた彼女
つまさきを侵す湯のような
手のひらにかみついて

正しいばかりが真実じゃない
裏返ったら笑顔
嘘が君を本当にする
繋いだ手は夢を見ない
銀は滲んで灰になる
誠実そうなその口元がひどく好きだったのだ

そっと閉めたそのドアは
さようならの似合わないひと
甘いのは言葉でも声でもなくて
作りものだから安心できるの
重りがないと沈むこともできない
キス≠恋≠愛情
心の奥に隠れろ
つながれた手に知らない世界を招く

なにひとつ正しくない
過ちだと言い切れれば楽だった
グロテスクに焼き付く
愛すことも許すことも全部同じだと思っていた
口先だけの熱
叫ぶことすら知らなかった
わらうだけでよかった/あいしていたよ
眠る人笑う声ひとり外を見ていた
わたしを、あなたを、揺らす揺らす揺さぶる
君の街には駅がない
がた、がたん、がたがた、がたん、
線路がないから進めない
月と並んで夜へ突っ込め!
トンネルを抜けても変われない

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(なみだ)
こぼすくらいならちょうだい
傷にしみるわよ
いくら溜まっても海にはなれないのに
泣いていいのはあなただけ
悟られなければ笑顔と同じ
電話越しの
はれた目がいとしくて
涙変わりの天気雨
薬みたいに呑み込んだ

(あたたかい/つめたい)
あれ、その服どうしたの?
たのしみにまっていて
たいせつなんて言ってあげないけど
カメみたくゆっくりいこうよ
いったいあなたは何者なのかしら
つながれないくせに離れることすら出来やしない
めいわくだっていうなら最初から突き放せばいいのに
ただニコリと笑う彼女が気に食わない
いままでは何だったっていうんだ

(ふたりのいみ/ひとりのいみ)
ふりつもる雨
たしかめることは裏切ること
りくの上でなかったら違っていたのかな
のっと飛び出す月に
いらないよ何一つ
みればみるほど失っていくの
ひねりだしてひっぱりだして
とっくのとうに全部しっている
りっしんべんも誰かのこころ
のめないおさけにごちる僕
いろをぬれなかった想いが
みあげたものは何だっただろう